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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(十二)狐の嫁入
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控(十二)狐の嫁入 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 139,230 characters · 280 screens
三
八、仕度をするんだよ」
平次はいよいよ御輿をあげました。
三
菊坂の六軒長屋は、わけの解らぬ不安に閉されたまま、町役人の監視の下に、お六の葬いの仕度を急いでおりました。
平次はおそろしく用心ぶかい態度で、まず入口の木戸の前に立って、長屋全体と近所との関係を見渡します。
「右手は崖――こいつは鵯越だ。越して越せないことはあるまいが、藪がひどいから犬が潜っても大きな音がする。まず夜中に忍び込む工夫はないな」
平次は眼を転じて左を見ました。
「こっちは旗本屋敷だよ、銭形の。忍び返しが厳重に打ってあるから、あの塀は越せまい」
喜三郎は左手を指します。
「すると出入り口は木戸一つだ」
三尺の木戸、古くなった隙間だらけですが、それでも繕いが丁寧ですから、外からは開ける工夫がありません。
「こいつは誰が締めるんだ」
「木戸の側に住んでいる佐の市の母親の役目になっているが、あの晩おそく帰った鋳掛屋の岩吉が締めたそうだ。亥刻半(十一時)近かったというよ」
「朝開けたのは」
と平次。
「佐の市のお袋が卯刻(六時)前に開けた。輪鍵はちゃんと内側へ掛っていたそうだよ。辰刻(八時)時分にお美乃が帰って来て、お六の死骸を見付けたのは辰刻半(九時)頃だろう」