Japanese reading practice

Read classic Japanese books with furigana

ja-reading.com

Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.

ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(十二)狐の嫁入

野村 胡堂

Read 銭形平次捕物控(十二)狐の嫁入 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 139,230 characters · 280 screens

Aozora Bunko

七

「どこへ行くんで、親分」

「どこでもいい」

平次は疲れた様子もなく、ガラッ八を伴れてまた下谷へ取って返したのです。

七

平次が訪ねて行ったのは、下谷一番と言われた、油屋の大徳屋でした。

「誰も聴いちゃいないでしょうな」

平次は煙管を出して一服つけると、静かにこう切り出しました。

「ここは離屋で、誰も聴くはずはありません。娘も奉公人も母屋で、廊下を人が来るとすぐ知れますよ。――一体どんな御用で、親分?」

物々しい空気に圧倒されて、徳兵衛の唇の色は少し変りました。が、大店の主人らしい鷹揚さは失わず、どんな事を言い出されても驚くまいとするように、膝に置いた手は、犇と単衣を掴んでおります。

「外ではない。――東海坊を自滅させたいきさつ、あっしはみんな知っているつもりだ。が、なろう事なら本人の口から言って貰いたい」

平次の言葉はこの上もなく静かですが、釘を打ち込むように相手の肺腑に響く様子です。

「それは?」

「いや、弁解は無用だ。――言いにくければ、あっしが代って言おう。いきなり縛って突き出すのはわけもないが、聴けば娘のお菊さんの婚礼が、明日に迫っているという話。その前の晩に縄付を出しちゃ気の毒だと思うから、わざわざやって来たようなわけさ」