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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(十二)狐の嫁入
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控(十二)狐の嫁入 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 139,230 characters · 280 screens
六
「婆や、お前はまア、――本当かい」
万七の手から放たれて、お秀は婆やのところへ飛んで来ました。
「お嬢さん、――とんでもないことをしてしまいました。今となってはみんな嘘にしたい、これが夢だったら、どんなに有難いでしょう。でも、そんなわけには参りません。私は人殺し、――恐ろしい人殺し婆アになってしまいました。触ったりしちゃいけません。それじゃお嬢さん、もうお目にかかる折もないでしょう。お身体に気をつけて、お丈夫で暮して下さい」
「婆や、お前に人なんか殺せるはずはない。それはなにかの間違いだろう。婆や、婆や、行っちゃいや、いや」
お秀は婆やに縋り付いて、赤ん坊のように泣くのです。
三輪の万七は際限もないと思ったか、お神楽の清吉に眼配せをしました。
「えッ、立てッ」
清吉の十手はキラリとお谷婆さんの肩のあたりを打ちます。
六
「親分」
「八」
「やはりあのお谷婆さんが下手人ですかね」
二人はしばらく経ってようやく我に返りました。万七と清吉はお谷婆さんに縄打って引立てた後、次郎右衛門はじめ奉公人たち一同、ただ気抜けたように茫然としている中を、お秀の泣き声がたえだえに縫っております。