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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(十二)狐の嫁入

野村 胡堂

Read 銭形平次捕物控(十二)狐の嫁入 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 139,230 characters · 280 screens

Aozora Bunko

四

平次は話頭を軽く転じました。

「朝起きてみると、お勝手口の戸が開いていて、外には大きな足跡が付いていました」

「確かに戸は開いていたに違いあるまいな」

「え、――寒い風が吹込んでいました」

「八、雪の降り出したのは、何刻ごろだえ」

平次は八五郎を顧みました。

「戌刻時分から降り始めて、夜中にひどくなりましたよ」

「降り止んだのは」

「大降りだった割りに早く霽れたようですね。牡丹雪で二た刻ばかりの間にうんと積ったんでしょう、寅刻(四時)前に小用に起きた時は、小降りになってましたよ」

「すると、下手人は寅刻近くに出て行ったわけだな、――その足跡には雪が降っていなかったのか」

「え」

「お勝手口は締め忘れたのか、それとも外からコジ開けたのか」

「三輪の親分さんは、鑿か何かでコジ開けたに違いないと言いました」

お鶴がそう言うまでもなく、お勝手の雨戸にも敷居にも、大きな傷のあることは、その間に家中を嗅ぎ廻っている、ガラッ八もよく見窮めておりました。

四

つづいて下女のお吉を呼んで調べましたが、大した役に立ちそうなこともありません。

「何にも知りましねェよ。けさお鶴さんに騒ぎ出されて、びっくりして飛んで行っただ」