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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(十二)狐の嫁入

野村 胡堂

Read 銭形平次捕物控(十二)狐の嫁入 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 139,230 characters · 280 screens

Aozora Bunko

六

男がよくて物柔かですから、お六婆さんだって、あんな解った人と話しているのは、満更悪い心持じゃなかったでしょう」

「お前は」

「良いような悪いような、へッ、へッ」

一向要領を得ませんが、それでも平次は必要な程度の顎は取った様子です。

六

お六の家には、町役人と雪之助と与八の女房が詰めて、葬いの仕度をしておりました。平次はここに腰を据えて調べるのかと思うと、勝手口の表戸の締りだけ見て、至って簡単にきりあげ、最後に路地の突き当りの枳殻垣越しに、寺の境内の様子を眺めました。

「ひどい雪解けだね。二三日垣の側へ人間が歩いて来た様子はない――おや、この境内の土は真っ黒じゃないか」

独り言のように言って、平次はスタスタと菊坂の通りへ出るのです。

「親分、帰るんですか」

八五郎はあわてて追い付きました。

「そうだよ、もうあの長屋には調べることはない」

「下手人は?」

「解った心算だ。――お前気の毒だが今日一日身体を貸してくれ」

「ヘエ、何をやらかしゃいいんで」

「耳を借せ」

「ヘエー」

何やら言い付けて、八五郎を飛ばしてやると、平次は改めて喜三郎のけげんな顔を迎えました。

「真砂町の兄哥、今日陽の暮れる前に、ここへ皆んな集めてくれまいか」