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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(十二)狐の嫁入
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控(十二)狐の嫁入 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 139,230 characters · 280 screens
六
一人一人調べて行くと、嘗めたように綺麗なのは、一番弟子の東山坊こと定吉と、御厩左門次と女たち。泥と炭でひどく汚れているのは、大徳屋の主人徳兵衛と、棟梁の竹次。あとの五六人は薄汚い程度で、格別、炭も泥も付いてはいず、洗った様子もありません。
「洗ったのか」
平次は定吉の顔を見詰めました。
「ヘエ、ひどく汚れましたので」
「俺も洗ったが、悪いか」
御厩左門次は、何か突っかかりそうな物言いです。平次はそれに取合わず、
「八、こんどは着物だ、手伝ってくれ」
「さア、一人ずつ立ってみろ」
おびただしい灯明の前に、一人ずつ立たせました。
定吉も左門次も、徳兵衛も竹次も、火を消すのに手伝って、少しずつは着物が汚れておりますが、狭い抜け穴を潜ったと思われる程のはありません。わけても汚れているのは定吉で、いちばん綺麗なのは身だしなみの良い徳兵衛です。
六
それから五六日、銭形平次は八五郎以下の子分や下っ引を動員して、定吉、左門次、徳兵衛、竹次、文七、利八、その他関係者を洗いざらい調べ抜きました。
日頃の行状、金廻り、東海坊との関係、一つも漏らしません。抜け穴の仕掛けの下に石と材木を積んだのは、咄嗟の間の細工で、女や子供には出来ない芸と睨み、調べは専ら男に集中しましたが、それでも、東海坊をめぐる女の一群に関心を持たない平次ではありませ