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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(十二)狐の嫁入
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控(十二)狐の嫁入 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 139,230 characters · 280 screens
銭は刃に鳴って、寺本山平は抜刀を持ったまま、八五郎の頭を越して外に飛出します。
*
何もかも済んだのは翌る朝になりました。
少し薄手を負わされた八五郎が、寺本山平を送るとすっかり元気になって、平次と一緒に家路を急ぎながら、相変らず絵解きを迫ります。
「どうして下手人がお谷婆さんじゃないと解ったんですか、親分」
「かんだよ、――それに、死骸の血の出ようの少ないのも気になったから、傷口を洗ってよく見ると、喉を指で押した跡があるんだ」
「ヘエ」
「死骸を俯向きにして見ると、首筋にも指の跡がある。――匕首が突っ立っているから、うっかり騙されたが、あれは刺される前に、男の強い力で扼め殺されていたんだ」
「へ」
「そこへお谷婆さんが忍び込んで来て、枕の下から匕首を引出して死んだとは知らずに、お皆の喉へ突っ立てた。――いや、喉へ突っ立てる心算だったかも知れないが、実は首筋を外れて枕へ突っ立てたのさ。お谷婆さんは面喰らっているから、そんなことに気が付かない。あわてて部屋から飛出したが、さすがに捕まるのが怖かったと見えて、面喰らって庭下駄を履いて木戸のところまで逃げ出したが、思い直してまた家の中へ帰った。