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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(十二)狐の嫁入

野村 胡堂

Read 銭形平次捕物控(十二)狐の嫁入 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 139,230 characters · 280 screens

Aozora Bunko

雪の降り出す前で――」

「それっきり寝てしまったのか」

「は、いえ、按摩さんが来ました」

「どこの按摩で、何という」

「玉姫の多の市という人で、よくこの辺を流して歩きます。御主人様が昼のうちに往来で逢って約束なすったそうで、亥刻半(十一時)頃雪が降り出してからいきなり入って来ました」

「揉ませたのか」

「遅いからもう止そうと断りましたが、多の市さんは依怙地な方で、こんな大雪にわざわざ来たんだからと、無理に入り込んで――」

「二階へ上がったのか」

「いえ、階下の八畳でちょっと揉んで貰いました」

「帰ったのは?」

「すぐ帰りました。子刻(十二時)前だったでしょう」

「それから」

「御主人は二階へ行ってお休みになりましたし、私は階下で、いつものように休みました」

「二階へは有明を灯けておくのか」

「油が無駄だからとおっしゃって、いつでもすぐ消します」

佐野喜の主人ともあろうものが、有明の種油を惜しむというのは、ちょっと常人に思い及ばないことです。

「ゆうべ主人は酒を呑まなかったのか」

「晩の御飯のとき二合くらい召し上がりました」

「そんなことでよかろう。ところで今朝の様子を話してくれ」