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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(十二)狐の嫁入
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控(十二)狐の嫁入 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 139,230 characters · 280 screens
「親分」
「なんだ、八」
「妙に仔細がありそうで気を揉ませるじゃありませんか。いきなりあの家へ当ってみましょうか、十手を見せて締め上げれば、わけはありませんよ」
「待ちなよ八、それじゃ、あんまり智恵がなさすぎる、――上の糸は苧や橙の術でおと読ませるに決っている。その次は紐に相違ないが、輪にして端っこを結んであるから襷さ。襷の下を隠して髢をブラ下げたのは、待ってくれ八」
「親分」
「こいつは、おたすきけと読めるぜ、たすきの下の方が毛で隠れているから、おたすけだ」
「えッ」
「こんな手数のかかる謎々が、虚仮や狂人の智恵で拵えられるものか。来いッ八」
「親分」
八五郎はもう尻を端折って、二三十里カッ飛ばすほどの勢いです。が、お早の家は、女坂を降りるともうじきでした。
「御免よ」
平次はいきなり格子を開けると、
「ハ、ハイ、どなた様で?」
お早は少しまごまごしております。
「平次だよ。六助はいるのか」
「ヘエ、あの、どんな御用でしょう」
御法の裏を潜るお早は、高名な御用聞の顔を見ると、なんとはなしにギョッとした様子です。
「二階をちょいと見せて貰おうか」
平次は立ち塞がるお早を払い退けるように突き上がりました。