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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(十二)狐の嫁入
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控(十二)狐の嫁入 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 139,230 characters · 280 screens
三
「家の者は?」
「お嬢さんの幾代さん、――これは先代の旦那様のひと粒種で、十八でございます」
なんとか小町と言われた美しい娘。その名を言うだけでも、幸吉の頬が熱するのです。
「奉公人は?」
「下女が二人、お山というのは三十五六の房州者の飯炊きで、五六年奉公しております。お道というのは二十四五で、身体が少し悪くて嫁の口を諦めたとかで、三年ほど前から奉公しております。亡くなった一番番頭の口入れで」
「病気でもあるのかい」
「いえ、少し足が不自由で」
「それっきりか」
「ヘエー」
「外の者で、浅田屋を怨んでいる者はないのか」
「先代の時ならともかく、近ごろ商売の方も至って手狭ですし、御主人は気が大きくて付合いの良い方ですから、怨まれるわけもございません」
「それだけのことじゃ手の付けようはあるまいよ。まアまア気を大きくして、もう少し様子を見るんだな。十二本目の手紙が来たら、それを破ったり捨てたりしないように、できるなら主人に見せずにそっとここへ持って来るがいい」
「ヘエ、それではなにぶん宜しくお願い申します」
こんなことで、何の要領も得ずに幸吉は帰ってしまいました。
三
「親分、大変なことになりましたよ」