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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(十五)茶碗割り
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控(十五)茶碗割り (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 109,804 characters · 225 screens
「縁の下じゃない。――引窓から入れると思うんだ。八、そこを閉めてくれ」
「外から開けるんですか、親分」
「手加減なんかしちゃいけないぜ、確り閉めてくれ」
引窓の綱を絞って、厳重に結ぶのを見て、平次は外へ出て行きました。
まもなく、お勝手の横に掛けてあった梯子を登って、平次は屋根の上に立った様子です。引窓は外からキシみます。平次は何やら隙間に差し込んで、その隙間を少しずつ少しずつ大きくしております。
厳重に結えたようでも、引窓の綱にはかなりの弛みがあり、上からコジられるごとに、隙間は少しずつ大きくなって行きました。やがてその隙間からスルスルと伸びて来た鳶口が一梃、ガラッ八が念入りに縛った引窓の綱の――土竈の上の折れ釘のところの――結び目に引っ掛ると、なんの苦もなく解いてしまったのです。
引窓はサッと開いて、平次の笑った顔が、大空を背景に頭の上に現れました。
「あッ」
驚く人々の前に、引窓の綱を伝わった平次は、なんの造作もなく軽々と飛降りていたのです。
「やはりここから?」
「いや、これも一つの術だ。――が、ここじゃあるまいよ」
「?」
平次はこの素晴らしい発見を忘れてしまったように、クルリと踵を返しました。