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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(十五)茶碗割り
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控(十五)茶碗割り (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 109,804 characters · 225 screens
銭形平次捕物控
一
一
「親分、変なことがあるんだが――」
ガラッ八の八五郎は、大きな鼻の穴をひろげて、日本一のキナ臭い顔を親分の前へ持って来たのでした。
「横町の瞽女が嫁に行く話なら知ってるぜ。相手は知らないが、八五郎でないことは確かだ。今さら文句を言ったって手遅れだよ八。諦めるがいい」
銭形平次は無精髯を抜きながら、ケロリとしてこんなことを言うのです。お盆過ぎのある日、御用がすっかり暇になって、涼みに行くほどのお小遣いもない退屈な昼下がりでした。
「冗談じゃありませんよ。横町の瞽女はああ見えても金持だ。こちとらには鼻も引っかけちゃくれませんよ、へッへッ」
「嫌な笑いようだな。さては一と口申込んで小気味よく弾かれたろう」
「へッ、弾ねたのはこっちで」
「うまく言うぜ」
「ところで親分変な話の続きだが――」
「そうそう変な話を持って来たんだね。瞽女の嫁入りの話でないとすると、叔母さんがお小遣いでもくれたというのか」
「交ぜっ返しちゃいけません。この手紙ですよ、親分」
八五郎は懐中から一通の手紙を出すと、畳の上を滑らせるように、平次の前へ押しやりました。
「何? 手紙」
「達筆で書いてあるから、よくは読めねえが、おおよその見当は、二千両という大金を、この春処刑になった大泥棒の矢の根五郎吉が、このあっしに形見にやるという文句だ。