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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(十五)茶碗割り

野村 胡堂

Read 銭形平次捕物控(十五)茶碗割り (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 109,804 characters · 225 screens

Aozora Bunko

四

四

平次の仕事は一とわたり家の内外を見ると、次には死んだ巨盗蝙蝠冠兵衛の脅迫状を見せて貰うことでした。

「そいつは主人が預かっている。先刻検屍のとき、同心の内藤さんが眼を通して、後で取りに来るからと、主人に返したはずだ」

留吉に言われて、主人の部屋に通ると、

「その手紙はここにございますよ」

主人は気軽に立って棚の上の手箱を開けました。

「あッ」

立ち縮んだも道理、手箱の中には、一と掴みの灰だけ。確かにそこへ入れたはずの、巨盗の手紙三本は、煙のごとく消えてしまったのです。

「どうした」

留吉も八五郎も覗きました。

「ない。――確かにここへ入れたはずだが、なくなってしまいましたよ」

分別者らしい総右衛門も、さすがに顔色を変えます。

「そんなはずはあるまい」

「でもこの通り、箱は空っぽになって、灰が一と握り――」

銭形平次はその騒ぎを後ろに聴いて、そっと廊下に出ました。店の方には奉公人や近所の衆が、多勢で騒いでおりますが、ここはひっそりと静まり返って、廊下にも庭にも人影はなく、少しばかりの植込みを隔てて、恐ろしく高い塀が、物々しい忍び返しを見せて突っ立っております。