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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(十五)茶碗割り
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控(十五)茶碗割り (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 109,804 characters · 225 screens
五
「皆んなはお前によくしてくれるか」
「それはもう、三年越し患っている私を、こんなにお世話して下さいます。なんの不自由もございません。勿体ないほどで」
お町は枕の上に顔を伏せて、何やら念じている様子です。
「主人はどうだ」
「あんな良い方はございません。慈悲深い、思いやりのある方で、町内でも評判でこざいます」
それは平次も聴いておりました。善根を積むより外に余念のない成瀬屋総右衛門の評判は、神田あたりまでも響いていたのです。
「子供たちは?」
「島三郎さんはお店の方が忙しいようで、――よく働きます。お芳さんは本当に良い方で」
「お神さんはどうだ」
「正直一途の方でございます」
これは大した褒めようもなかったのでしょう。とにもかくにも、成瀬屋の家族に対する、お町の感謝と好意には疑いもありません。
五
巨盗の幽霊の手紙は、明らかに紛失しましたが、さいわい総右衛門が文句を諳んじているのと、留吉が筆跡や紙をよく見ておいたので、大体のことは平次にも想像がつきます。
手紙は三本とも、外から店に投げ込まれたもので、いずれも半紙を八つに畳んで結んだもの。中はかなりの達筆で、二年前生捕られて散々なぶりものにされた上、役人に引渡された怨みを陳べ、この妄執を晴らすため、成瀬屋の者を一人一人、残らず殺してやる、といった凄まじいことが、少しくどい