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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(十五)茶碗割り

野村 胡堂

Read 銭形平次捕物控(十五)茶碗割り (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 109,804 characters · 225 screens

Aozora Bunko

六

平次は医者の真似などをした間の悪さに、一人で苦笑いをしております。

「お芳の方は」

「これも綺麗だ――が、綺麗すぎたよ、洗ったばかりなんだ」

「洗ったばかり? あの娘の部屋を捜しましょうか、三本の手紙はどこかに隠してあるに違いない」

「止せ止せ。手を洗う隙がありゃ、三本の手紙くらいはどこへでも隠せるよ。若い娘に手荒なことをするでもあるまい。それよりお前は念入りにあの娘を見張っているがいい。きっと何か変ったことがある」

「ここに泊り込んでですか、親分」

「俺から主人へそう言ってやろう。脅え切っているから、喜んで泊めるだろうよ」

それは平次の予想通りでした。蝙蝠冠兵衛の脅迫はまだ果たされたわけでなく、この上の用心にガラッ八が泊ってくれるのは、成瀬屋にとってはこの上もない心丈夫なことだったのです。

六

「親分、なんにも変ったことはありませんよ」

ぼんやり八五郎が帰って来たのは、それから五日も経った後でした。

「ところがこっちには変ったことがあるよ」

「何です、親分」

「蝙蝠冠兵衛の倅が捕まったよ」

「ヘエ――」

「幸吉と言って、こいつは親に似ぬ堅い男だ。浅草で小商いをしているのを手繰って、二日前に金富町の留吉兄哥が挙げて来たよ」