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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(十五)茶碗割り

野村 胡堂

Read 銭形平次捕物控(十五)茶碗割り (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 109,804 characters · 225 screens

Aozora Bunko

「下手人も挙げなきゃなりませんが、それより、身にも家にも代えられないという大事の品が紛失しませんか」

「大事の品?」

「金や骨董じゃないでしょう。もっと大事な品、人間の命を幾つも釣替えにするほどの品がありませんか」

「そう言われるとこの守随家には、たった一つ身にも家にも代えられぬ大事の品がある。――それは先祖の守随兵三郎が、家康公の御招きで甲府から江戸に移り、秤座役所を預かったとき、家康公から直々に頂戴した御朱印だ」

「それだ、旦那、それがなくなるとどうなります」

「万一それが紛失すれば、秤座役人の株を召上げになった上、この守随彦太郎腹でも切らなければなるまい。――が、それは大丈夫だ。三重の締りをした奥蔵の二階、唐櫃に入れてそれにも二重の錠がおろしてある」

「奥蔵と唐櫃の鍵は?」

落着き払った彦太郎に比べて、銭形平次の方がすっかりあわてております。

「これだ、肌身を離したことはない」

守随彦太郎は腰を捜って、なめし革で作った鍵袋を出して見せるのです。

「夜分はこの袋をどこへ置くのです」

「寝間の枕元の手筐の中に入れるが、寝間へは誰も入って来ない。唐紙にはいちいち桟がおろしてある」