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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(十五)茶碗割り

野村 胡堂

Read 銭形平次捕物控(十五)茶碗割り (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 109,804 characters · 225 screens

Aozora Bunko

「それで溜めた三百両か」

「どんなに口惜しいか、それから泣いてばかりいたんだそうで、鬼婆アの角も折れたんでしょう」

「傷はどうだ」

「だんだん快いようで、外科も驚いていますよ」

「手代は?」

「与之松という遠縁の者で、――二十八という男盛りだが、少し足りない方で、使い走りと店番のほかには役に立ちません」

「その日は確かに外に居たんだろうな」

「日本橋の店へ使いに行って、こいつは確かに留守でした」

「近所に変ったことはないか」

「隣の九郎助というのは町内でも物持で、しもたや暮しをしているが、人の物などに眼をつける人間じゃありません。その娘のお菊というのが文次郎と変な噂のある女で、これはちょいと踏めますよ」

「女衒みたいなことを言うな」

「後家のお嘉代は九郎助と仲が悪くて、若い二人の仲をあまり喜ばないそうですよ」

「八、誰か外に待っているじゃないか、若い女の人のようだが」

不意に、平次は話半分にして、入口の方を覗くのでした。

「加島屋のお桃さんが来ていますよ。親分に会って、ぜひお願いがしたいって」

「なぜ入れないんだ。――つまらない遠慮じゃないか」

「ヘエ――、会って下さるんですか、親分」