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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(十五)茶碗割り

野村 胡堂

Read 銭形平次捕物控(十五)茶碗割り (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 109,804 characters · 225 screens

Aozora Bunko

「容易のことで手籠にされる親分じゃありませんが」

滅茶滅茶に取乱した死骸から顔を反けて、石松はまた涙をこぼすのです。

全く関口の太助は立派な御用聞でした。まだ三十代の若盛りで、腕っ節も智恵も人並にすぐれ、少し向う見ずで軽率ではあったにしても、悪者の罠に陥ちて、手籠にされるような男ではなかったのです。

死骸には斬り傷も突き傷もありませんが、頭から手足へ打撲傷だらけで、それが紫色になっているところを見ると、息のあるうちに拵えた傷でしょう。平次の馴れた眼からは、打撲傷がどんなにたくさんあろうとも、命を奪ったのは水で、身動きもならぬように縛った上、水の中へ抛り込まれたものに間違いもありません。

「重りが付いてあったんだね」

「その石が抱かせてありましたよ」

石松は死骸の傍に転がされた、沢庵の重石ほどの石を指します。

胸から首だけは縄を解いてありましたが、腰から下はまだそのままになっていたので、平次は丁寧に縄をほどき始めました。結び目は至って緩く、俗に機織結びというので、身体の傷は想像以上に滅茶滅茶です。肩から首筋額へかけての傷のうち、その幾つかは棒か竿で突いたような跡でしょう。