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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(十五)茶碗割り

野村 胡堂

Read 銭形平次捕物控(十五)茶碗割り (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 109,804 characters · 225 screens

Aozora Bunko

「有難うございます」

平次はていねいに礼を言って、奉公人の部屋へ下がりました。若党の三次は二十七八のちょっと良い男。――頭の空っぽな美男によくある、髷の刷毛先や、腹掛けの皺や、煙草入の金具ばかり気にするといった男。爺やの熊吉は、馬糞茸が化けて、仮に人間のヒネたのになったといった老人です。

門を出ると、

「八、関口の子分衆と、下っ引を五六人集めて、あのお妾姉妹と、奉公人達の身許をすっかり洗ってくれ。詳しいほどいい」

平次は八五郎に言い付けました。

「親分は?」

「俺はもう一度大滝へ行ってみる。あの辺に大八車か何かあればしめたものだが」

平次のこの予想は見事はずれました。八五郎に別れて大滝へ引返した平次、その辺を隈なく捜しましたが、大八車はおろか、玩具の風車もそこにはなかったのです。

その日は八方に飛ばした下っ引の報告を待って、空しく暮れました。八五郎はそれっきり顔を見せず、彦徳の源太に呼出される前、一応の注意をしておくべきであったと思いましたが、その運びもつかぬうちに、夜は次第に深くなります。

「親分ッ」

表の格子戸を押し倒して、八五郎が飛込んで来たのは、子刻(十二時)近い頃でした。