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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(十五)茶碗割り
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控(十五)茶碗割り (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 109,804 characters · 225 screens
――何とかしてやって下さいよ。親分」
「俺にも判らないよ、待て待て。――少し考えてみる」
平次は高々と腕を拱くばかりです。
その晩正亥刻半(十一時)、平次は彦徳の源太の手紙で指定された通り、小日向の竜興寺裏門前に立っておりました。
ほんの煙草の二三服ほど待つと、眼の前の月明りの中に、ヌッと立った者があります。頭の大きな黒装束、見事な恰好。
「…………」
黙って小手招ぎすると、平次は心得てそれに従いました。生垣の間を通ったり、屋敷の塀について廻ったり。――前夜ガラッ八に飛付かれた苦い経験のせいか、曲者は平次からは少し離れて、不気味な沈黙を続けたまま、神津家裏門外の、三日月の井戸まで導いて行ったのです。
「二千両の小判はこの井戸の中にあるよ――夜じゃ見えない、灯で見るがいい」
ピーンと金属性の響を持った不思議な声です。曲者はそう言いながら、用意したらしい手燭と火打道具を井桁の上におくのでした。
平次、何のこだわる色もなく、ズカズカと進んで、落着き払った態度で火打鎌を鳴らし、手燭の蝋燭に点しました。
「灯があればよく見える。千両箱が二つ、水の中にあるよ。ヒ、ヒ、ヒ、ヒ、ヒ」