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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(十五)茶碗割り
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控(十五)茶碗割り (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 109,804 characters · 225 screens
銭形平次捕物控
一
一
「親分は? お静さん」
久し振りに来たお品は、挨拶が済むと、こう狭い家の中を見廻すのでした。一時は本所で鳴らした御用聞――石原の利助の一人娘で、美しさも、悧発さも申分のない女ですが、父親の利助が軽い中風で倒れてからは、多勢の子分を操縦して、見事十手捕縄を守りつづけ、世間からは「娘御用聞」と有難くない綽名で呼ばれているお品だったのです。
とって二十三のお品は、物腰も思慮も、苦労を知らないお静よりはぐっと老けて見えますが、長い交際で、二人は友達以上の親しさでした。
「何か御用?」
お静はお茶の仕度に余念もない姿です。
「え、少しむずかしい事があって、親分の智恵を借りたいと思って来たんだけれど――」
「生憎ね、急の御用で駿府へ行ったの、月末でなきゃ戻りませんよ――八五郎さんじゃどう?」
「親分がお留守じゃ仕様がないねえ。――八五郎さんにでもお願いしようかしら」
お品は淋しく笑いました。ガラッ八の八五郎の人の良さと、頼りなさは、知り過ぎるほどよく知っております。
「八五郎さん、ちょいと」
お静が声を掛けると、いきなり大一番の咳をして、
「お品さんいらっしゃい」
ヌッと長い顔を出すのです。