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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(十五)茶碗割り
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控(十五)茶碗割り (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 109,804 characters · 225 screens
「そんなわけには行かないよ。本当に勇太郎が下手人なら、あんなにあわてるはずはない。それにあれだけの傷を拵えたんだから、下手人はうんと血を浴びるはずだ。勇太郎にはそんなものはなかったぜ」
平次は落着き払っております。
「家へ帰って着換えて来る術もありますよ」
「そんな落着いたことの出来る男じゃない」
「でも、勇太郎の秤は見付かりましたよ、分銅にはうんと血が付いて――」
「どこで見付かったんだ」
「町内の若い者が妻恋稲荷の後ろの藪で見付けたんで」
「秤と分銅と一緒になっていたのか」
「秤の先へ分銅を縛ってあったそうです」
「フーム」
「これだけでも、三輪の親分なんかの耳に入ると、勇太郎を縛りますよ」
「家へ帰って着物を換えるほどの落着きがあるなら、分銅くらいは洗っておけそうなものじゃないか。現場のすぐ近くへ、血の付いたまま捨てて行くのは、下手人はこの秤の持主ではないと言っているようなものだ。勇太郎はそれほどの馬鹿じゃあるまい」
「そうですかね」
平次の論理の前に、ガラッ八は小首を捻るばかりです。
「お芳はどうした」
「世間では何とか言うが、あの娘は人を殺すような人間じゃありませんよ。