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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(十五)茶碗割り

野村 胡堂

Read 銭形平次捕物控(十五)茶碗割り (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 109,804 characters · 225 screens

Aozora Bunko

町役人は弁解がましく口を入れました。そういえば越前屋の主人佐兵衛が急死したことは、平次もガラッ八も聴いておりました。重なる不幸で、越前屋の混雑は思いやられます。

「――そのうえ店のこと万端取仕切っている甥の吉三郎さんが、大坂へ商売用で行っているとかで、迎えの飛脚を出す騒ぎでしたよ」

町役人は更に注を入れました。

「濡れ手拭を持っているところを見ると、風呂の帰りでしょうね。親分」

「鬢も濡れているよ。――風呂の帰りに、わざわざ柳原河岸へ出るのは変じゃないか。それに――」

平次は首を傾けております。

「何か変なことがあったんですか、親分」

「変なことだらけだ」

「首を斬るのは穏やかじゃねエ。辻斬でなくても、下手人は武家に決ってるようなものですね」

と八五郎。

「穏やかな人殺しというのはないだろうが、――この下手人は武家じゃないよ」

「ヘエ――」

「やっとうの心得などのない人間だ」

「何だって、それじゃ首を斬り落したんでしょう」

「それが解れば一ぺんに下手人が挙がるよ」

「?」

「どうかしたら、一度絞め殺しておいて、それから首を斬り落したのかも知れない。生き身の人間がこんなに斬りさいなまれながら、黙っているわけはねエ、いくら柳原でも、家もあれば人も通る」