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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(十五)茶碗割り

野村 胡堂

Read 銭形平次捕物控(十五)茶碗割り (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 109,804 characters · 225 screens

Aozora Bunko

「店の支配人はいないのか。――騒いでばかりいちゃ調べができない」

検屍の同心苅田孫右衛門は、駆けつけざま、この混乱を睨め廻しました。

「ヘエ、支配人の吉三郎は大坂へ行っております」

甥の金次は小腰を屈めます。

「番頭の清六が殺されて、支配人が留守だとすると、あとの取締りは誰がするのだ」

「私でございます、ヘエ」

若くて少し道楽強そうな、金次に、越前屋の取締りはできるかどうか、同心苅田孫右衛門も胡散な眉を寄せました。

「支配人はいつ帰るのだ」

「二十日前に主人佐兵衛が頓死いたしましたので、その日のうちに大坂へ急使を出しました。なにぶん上り下り二十四日の旅程で、大坂で出発前に一二日手間取ると見ても、あと六七日経たなければ、江戸へは戻りません」

「それでは、支配人の吉三郎が戻るまで、お前が代って店の支配をすると思って差支えはあるまいな」

「ヘエー」

「ここでは調べもなるまい。一同の者は番所へ参れ、死骸も運んで来るがよい」

苅田孫右衛門が先に立って、一同の者はツイ眼と鼻の間の、浅草橋番所へ引揚げました。

調べの結果、いろいろの事が判って行きます。主人佐兵衛が二十日前に死んだのは、明らかに卒中で、これは越前屋の者が口を揃えて言うことに疑いもありません。