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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(十五)茶碗割り

野村 胡堂

Read 銭形平次捕物控(十五)茶碗割り (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 109,804 characters · 225 screens

Aozora Bunko

四

番頭さんが死んだ上は、吉三郎さんが大坂から帰った上で、皆んな顔を合せて、あっしから申上げ、遺言状を取出して、その通りにしなきゃなりません」

「お前を殺して、どうしようというのだろう――その遺言状を奪る気かな」

「あっしを殺せば、遺言状の隠し場所は誰にも判りゃしません。番頭さんは殺されてしまったし、遺言状はそのまま腐ってしまいますよ」

「腐ってしまう」

「ヘエー」

「ともかく、そいつは俺一人の思案じゃ埒があかない。ちょいと銭形の親分のところへ行ってみないか」

八五郎はさすがに己を知っておりました。

「もう外へ出るのは御免ですよ。ここへ来るんだって、容易のことじゃなかったんで。誰か跟けている様子で」

「気の弱いことを言うな」

「でも、どこから白刃が飛出すか、わかったものじゃありません」

「よしよし、それじゃ俺だけ行って来る。此家から外へ出ちゃならねえよ」

「出ろったって出やしません」

「大丈夫だな」

八五郎は万事を叔母に任せて、親分の銭形平次の家へ駆け付けました。

四

ガラッ八が平次をつれて引返して来たのは、それからほんの一刻の後。

「松五郎さんはすぐ帰ったよ」

あれほど頼まれた叔母は、けろりとしてこんな事をいうのです。