Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
ひだのかいだん
飛騨の怪談 新編 綺堂怪奇名作選
岡本 綺堂
Read 飛騨の怪談 新編 綺堂怪奇名作選 (ひだのかいだん) by 岡本 綺堂 (おかもときどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 130,271 characters · 263 screens
(三十四)
逃れたのは嬉しいが、扨其先に種々の困難が横わっていた。路は屡々記す通りの難所である、加之も細雨ふる暗夜である。不知案内の女が暗夜に此の難所を越えて、恙なく里へ出られるであろうか。
けれども、今はそんなことに頓着する場合で無かった。お葉は唯無闇に行手を急いだ。昼ならば一度越えた路に就て、多少の心覚えや目標も有ったか知らぬが、真暗黒では何が何やら些とも判ろう筈が無い。同じような岩や、同じような谷や、同じような坂が、そこにも此処にも路を遮って、彼女を遣らじと抑留めるようにも思われた。
「死んでも構うものか」
お葉は覚悟を極めた。見たような奴等の玩弄になる位ならば、寧そ死んだ方が優である。彼女は足の向く方へと遮二無二と進んだ。其勇気は健気とも云うべきであったが、此種の冒険は気の強いばかりでは押通せるものでない。猟夫や樵夫の荒くれ男ですら之を魔所と唱えて、昼も行悩む三方崩れの悪所絶所を、女の弱い足で夜中に越そうと云うのは、余りに無謀で大胆であった。
彼女は裳を高くげて、足袋跣足で歩いた。何を云うにも暗黒で足下も判らぬ。剣なす岩に踏み懸けては滑り墜ち、攀上っては転び落ちて、手を傷け、脛を痛めた。