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ひだのかいだん
飛騨の怪談 新編 綺堂怪奇名作選
岡本 綺堂
Read 飛騨の怪談 新編 綺堂怪奇名作選 (ひだのかいだん) by 岡本 綺堂 (おかもときどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 130,271 characters · 263 screens
(二)
な唄を謡う様になった。
行くにゃ辛いがお山は飛騨よ
黄金白金花が咲く
「小旦那……小旦那……。昨夜も亦、彌作の内で鶏を盗られたと云いますよ。」
「鶏を……。誰に盗られたろう。又、銀山の鉱夫の悪戯かな。」と、若い主人は少しく眉を顰めて、雇人の七兵衛老爺を顧った。
「何、何、鉱夫じゃアねえ。」と、七兵衛は頭を掉って、「それ、例の……。」
「例の……。」
「ですよ。」
「むむ、山か。ははははは。ここらでは未そんなことを云ってるのか。」
若い主人は一笑に附し去ろうとしたが、七兵衛は固く信じて動かぬらしい。
「小旦那は幾ら東京で学問したって、そりゃア駄目でがすよ。現在、※(「けものへん+操のつくり」、第4水準2-80-51)が出て来るんだから仕方がねえ。論より証拠だ。」
(二)
若主人の名は市郎、この駅では第一の旧家と呼ばるる角川家の一人息子である。斯ういう山村に生れても、家が富裕であるお庇に、十年以前から東京に遊学して、医術を専門に研究し、開業試験にも首尾好く合格して、今年の春から郷里に帰った。年は二十七歳で、色の浅黒い活発の青年である。
ここは山村で昔から良い医師が無い。