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ひだのかいだん
飛騨の怪談 新編 綺堂怪奇名作選
岡本 綺堂
Read 飛騨の怪談 新編 綺堂怪奇名作選 (ひだのかいだん) by 岡本 綺堂 (おかもときどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 130,271 characters · 263 screens
(四十五)
白昼ではあるが山風は寒かった。人々は顔を見合わして物を云わなかった。
この驚くべき報告が麓へ拡まると、町からも村からも大勢の加勢が駈着けた。安行の屍体は自宅へ、お杉と※(「けものへん+操のつくり」、第4水準2-80-51)の亡骸は役場へ、其れ其れに引渡しの手続を了えた。まだ息の通っている怪しの男は一先ず駐在所へ運び入れて、医師の手当を受けさせた。
塚田巡査は疲労をも厭わず、直ちに事件の取調べに着手した。お杉と山※(「けものへん+操のつくり」、第4水準2-80-51)との死は市郎の申立てに因って事情判明したが、安行は如何にして殺されたか能く判らぬ。次に此の瀕死の男は何者の手に掛ったのか、それも判らぬ。彼はお杉や※(「けものへん+操のつくり」、第4水準2-80-51)に関係があるか、或は別種の出来事か、それも判らぬ。猶其他にも昨夜の惨殺屍体と云うものが有る。それと之と因縁の糸が連絡しているか何うか、それも亦疑問である。巡査も此の解釈に就ては大いに頭を悩した。
(四十五)
「どうも判らぬ。」と、塚田巡査も頻に考えた。市郎に就ては此上に取調べようも無い。は逃げて了った、重太郎は行方不明であった。