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ひだのかいだん
飛騨の怪談 新編 綺堂怪奇名作選
岡本 綺堂
Read 飛騨の怪談 新編 綺堂怪奇名作選 (ひだのかいだん) by 岡本 綺堂 (おかもときどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 130,271 characters · 263 screens
さりとて何等の武器をも持たぬ彼女は、咄嗟の間に思案を定めて、頭に挿している銀の簪を抜き取った。
目前の獲物に気を奪われていた※(「けものへん+操のつくり」、第4水準2-80-51)共は、暗い中から突然跳り出たお葉の姿に驚く間もなく、彼女が逆手に持ったる簪の尖端は、冬子に最も近き一人の左の眼に突き立った。不意と云い、急所と云い、彼は猿のような悲鳴を揚げて倒れた。
「※(「けものへん+操のつくり」、第4水準2-80-51)の畜生め。何を為やアがるんだ。早く何処へ行って了え。」と、お葉は勝誇って叫んだ。思いも寄らぬ救援の手を得た冬子は、鞠のように転がってお葉の背後に隠れた。
けれども、敵はまだ二人を剰している。加之も一人の味方を傷けられた彼等は、瞋って哮ってお葉に突進して来た。洋刃と小刀は彼女の眼前に閃いた。冬子も恩人の危険を見ては居られぬ、這いながら一人の足に絡み付くと、※(「けものへん+操のつくり」、第4水準2-80-51)は鉄のような爪先で強く蹴放したので、彼女は脾腹を傷めたのであろう、一旦は気を失って倒れた。※(「けものへん+操のつくり」、第4水準2-80-51)は左右からお葉に迫った。