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ひだのかいだん
飛騨の怪談 新編 綺堂怪奇名作選
岡本 綺堂
Read 飛騨の怪談 新編 綺堂怪奇名作選 (ひだのかいだん) by 岡本 綺堂 (おかもときどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 130,271 characters · 263 screens
(十四)
」
自分達が去った後へ、再び山※(「けものへん+操のつくり」、第4水準2-80-51)が現われて、トムの屍骸を盗み去らぬとも限らぬ。愛犬の骨を敵に渡すのは、何だか口惜い様にも思われるので、市郎は到頭トムを抱えて帰った。
(十四)
其翌る日も申分のない天気であった。霜は日増に深くなって来るが、朝の日影は麗かであった。
鉱山のお客だとか云う三人連が、昨夜から柳屋の奥に飲み明していて、今朝も早天から近所構わずに騒いでいたが、もう大抵騒ぎ草臥れたと見えて、午頃には生酔も漸々に倒れて了った。酌婦の笑い声も聞えなくなった。内も外も蕭寂となった。
心さびしや飛騨行く路は
川の鳴瀬と鹿の声
低声でこんな唄を謳いながら、お葉は微酔機嫌で門に出た。お葉は東京深川生れの、色の稍蒼白い、細面の、眉の長い女であった。彼女は自ら謳うが如く「心さびしい」のであろう、少しく眉を顰めつつ晴れたる空を仰いでいた。
「お葉さん、お葉さん。」
奥から続いて出て来たのは、お清という酌婦、色白の丸顔で、お葉よりも二三歳若く見えた。これも幾らか酔っているらしい、苦しそうに顔を皺めて、
「お前さん、何を見ているの。