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ひだのかいだん

飛騨の怪談 新編 綺堂怪奇名作選

岡本 綺堂

Read 飛騨の怪談 新編 綺堂怪奇名作選 (ひだのかいだん) by 岡本 綺堂 (おかもときどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 130,271 characters · 263 screens

Aozora Bunko

お葉は落葉の上に倒れていた。

「そうでがすよ。」と、七兵衛は首肯いて、「お前様よく知っていなさるね。這奴、若旦那を釣出そうと思ったって、然うは行かねえ。」

七兵衛は憎さげに顧った。冬子も嫉げに顧った。この四つの眼に睨まれたお葉は、相変らず落葉を枕にして、死んだ者のように横わっていた。

「酔っている様ね。」と、冬子は少しく眉を顰めた。

「這奴等ア毎日毎晩、酒ばかり食っているのが商売だからね。お前様も用心しなせえ。こんな阿魔が蛇のように若旦那を狙っているんだから……。」

「何しろ、何うか為なくっちゃア不可まい。兎も角も起して与って……。」

「さあ、さあ、寝た振なんぞ為ねえで、起きろ、起きろ、横着な阿魔だ。」

口小言を云いながら、七兵衛は進んでお葉を抱え起そうとすると、彼女は其手を跳ね退けて衝と起った。例えば疾風落葉を巻くが如き勢いで、さッと飛んで来て冬子に獅噛付いた。あれと云う間に、孱弱い冬子は落葉の上に捻倒されると、お葉は乗し掛って其の庇髪を掴んだ。七兵衛は胆を潰して、直に背後から抱き縮めたが、お葉は一旦掴んだ髪を放さなかった。

「阿魔、放せ。嬢様を何うするだよ。