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あるはいまつのどくはく
ある偃松の独白
中村 清太郎
Read ある偃松の独白 (あるはいまつのどくはく) by 中村 清太郎 (なかむらせいたろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 132,905 characters · 262 screens
よそ目には、無分別な――と思うほど、激しく叩く。振り立てる頭の赤さが、周囲の沈んだ色調から、飛び抜けて眼を奪う。虫でも漁るのか、と思えば……不意に、キャ、キャ、キャ……と叫んで、羽音も荒々しく、どこへか姿を晦ます。声といい、形といい、しぐさといい、すべて、あたりはばからぬゆゆしさ、ものものしさ。それに引きかえ、フィーヨ、フィーヨ、フィーヨ、と、しおらしく鳴く鳥もある。うそかとも。遠くの方でも、それに答えてか、フィ、フィ、と絶え入りそうな声……
訪なふは啄木鳥かや雪の破れ扉
こうした中で、たまに風呂の案内。これはたいした馳走なのだ。裏口から、吹き抜きの長廊下を渡って、湯殿へ。納屋に隣って、小さな小判なりの据風呂に、鉄砲の炭火が赤い。それより、なお暗いほどの、豆ランプが、ぽつり、と一つ。うっかり裸かになって、沸き過ぎていたら、それこそ、事だ。隅の籠に、盛り上げてある、氷の大塊を、抱え込んで、うめるので……。氷は、裏の沢から、ぶっ欠いて運んできたもの。それが尋常の氷でない。栂の実とか、唐檜の葉、枯枝ごとのさるおがせなんど、さまざまに、草入水晶そっくり、美しく透けて見える……。