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なんごくたいへいき
南国太平記
直木 三十五
Read 南国太平記 (なんごくたいへいき) by 直木 三十五 (なおきさんじゅうご) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 493,291 characters · 991 screens
そして、雨のように砕けて降りかかった。
山内は、血を避けると同時に、次の敵のために刀を構えて、一間余りの後方に立っていた。真赤な顔であった。青年は、血を噴出させて、黒い影を、人々にちらっと示したまま――谷へ落ちたのであろう、何処にも姿が無くなった。
敵も、味方も、暫く黙っていた。山内が、右手に刀を持って、左手を柄から放した。そして、後方へ小声で
「布は無いか」
「傷したか」
「指を二本、落された」
「おお、どの指を――」
山内が、右手片手で、刀を構えて、指を後方へ示した時
「山内、見事だ。おれが、対手になる」
「見た面だのう」
若者は、答えないで、刃尖を地の方へつけて、十分の距離を開けた。薩摩独自の剣法、瀬戸口備前守が発明したと伝えられる示現流(一名、自顕流、自源流。自源という僧、天狗より伝わったものという)特異の構えである。
馬蹄の音が、向う山に響いて、青年の背後へ近づいて来た。二三人が、振向くと、三人の士が、馬を走らせて来ていた。
「邪魔の入らぬうち――」
と、一人が叫んだ。
「斎木殿、御対手申す」
最先にいた若者が、刀を抜いた。それと同時に、若者も、牧の人々も、一斉に、鞘を払った。