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なんごくたいへいき
南国太平記
直木 三十五
Read 南国太平記 (なんごくたいへいき) by 直木 三十五 (なおきさんじゅうご) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 493,291 characters · 991 screens
それが、かちっと、触れて、音立てた時には、どっちかが、傷つくか、殺されるかの時だった。敵も、味方も、狭い道の背後から、隙があれば、一太刀でも助けようとしていたが、何うすることもできなかった。
「引けっ、刀を引けっ――山内っ、斎木っ」
新納は、若者の中へ、馬を乗り入れて来た。若者は、家老の位置に対し、無抵抗でいなければならなかった。
「兵頭っ、刀を引け――引かぬかっ」
「はっ」
兵頭が、こう答えた刹那、新納が
「山内っ」
と、叫ぶのが早いか、山内の打込んだのが早いか――兵頭は
「おおっ」
さっと、引くと、新納の馬へ、どんと、ぶっつかった。よろめきながら、閃いた刀を、反射的に受けて
「何をっ」
「山内っ、おのれっ、たわけ者がっ」
新納が、山内の前へ、馬をすすめた。馬は怖じて、頸を上げながら、二三尺、山内の方へ胸を突き出して、脚踏みした。
「卑怯者っ、それでも、剣客かっ」
一人が、兵頭の後方から、山内へ怒鳴った。
「引け、引揚げいっ」
人々の後方にいた二人の馬上の士が、近くの若者へ、頭を振って、引揚げろといった。
「斎木、早く行け、牧は行ったか」
「御無事に」
新納は頷いて