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なんごくたいへいき
南国太平記
直木 三十五
Read 南国太平記 (なんごくたいへいき) by 直木 三十五 (なおきさんじゅうご) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 493,291 characters · 991 screens
男が
(しまった)
と、よろめき、小太郎が、腕に、重みを感じた時
「ええいっ」
小太郎自身が叫ぶよりも、腕が、咽喉に叫ばしたのだった。男がよろめいて、前へのめる力を、そのまま引いて、さっと、太腿を払った引倒しの一手。どどっ、板の間に、壁に、天井に響いて、男はうつ伏せに、倒れてしまった。棒が、からんからんと、板敷へ音立てて転がった。小太郎は蒼白な顔をして、突立った。
「やいっ、仙波っ、小倅」
小藤次は、刀へ手をかけて怒鳴った。
「うぬは、もう、素浪人だぞっ。土足のまま人の家へ入りゃあがって、この泥棒め。勝手に、人の宅へ入りゃあ、引っ捕えて、自身番へ渡されるのを知らねえか。この野郎」
小太郎は、前から企んでいた計だと感じた。
(いけない、長居しては――)
一人を叩きつけたので、いくらか、胸が納まった。
板の間へ叩きつけられた男は、起き上らなかった。小太郎が、出ようとすると
「殺しゃあがったなっ――人殺し」
と、一人が叫んだ。
「えらい血だ」
「医者っ」
「役人を呼んで来いっ」
「逃すな」
奥からも、向い側からも、人が走り出して来た。
抱き上げられた男は、口から血を流していたし、鼻血で、頬も、額も染まっていた。