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なんごくたいへいき
南国太平記
直木 三十五
Read 南国太平記 (なんごくたいへいき) by 直木 三十五 (なおきさんじゅうご) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 493,291 characters · 991 screens
軽輩は、すぐ下へ降りて、蓑笠をつけた。そして、上席の人々は、自分の供を呼んで、提灯をつけさせた。人々が降りると、料亭の主人が、草鞋を持って出て
「この路になりましたからには、高下駄では歩けませぬ。どうか、これを、お召しなすって下さいませ」
と、いった。
「御一同、草鞋にかえて――途中のこともある」
人々は、袴を脱いで、懐中し、供に持たせ、身軽になって、草鞋を履いた。
「何れ、物見に一足先へ」
と、いって、踏み出した一人が――何を見たのか
「待てっ」
と、叫んで、雨の中へ、笠をかなぐり捨てて、走り出した。四五人が、その声に、軒下に出ると――遠くに、足音が小さくなるだけで、何も見えなかった。
「亭主、怪しい奴がうろうろしておらなんだか」
「一向に、見かけませんが――」
「油断がならぬ。一同、御一緒に」
人々は、刀を改めて、帯を締め直した。
「益満に、仙波は、何うした」
と、一人がいって
「益満」
と、二階の二人を呼んだ。益満の落ちついた声で
「少し、仙波殿と相談事があるで、かまわずお先に」
と、いった時、ぴたぴた泥を踏んで
「逃した」
と、呟きつつ、一人が、戻って来た。
「見張らしい。