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なんごくたいへいき

南国太平記

直木 三十五

Read 南国太平記 (なんごくたいへいき) by 直木 三十五 (なおきさんじゅうご) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 493,291 characters · 991 screens

Aozora Bunko

廊下に、忙がしい足音がして、障子越しに

「見届けて参りますか」

と、一人が聞いた。

「何んじゃな」

「暴民のように心得まする」

言葉の終らないうちに、門前の施民の群が、鬨の声を揚げて走り出した。

調所は、金網から、身体を起して

「見て参れ――加納に、すぐ邸を固められるように、手配申しつけておけ」

二人の去る足音に混って、大勢が往来を走る――騒ぐ音が聞えて来た。

「起る、起ると、前々から噂立っておりましたが――」

「窮民も、無理はないし――と、いって、金持にも、理前がある」

調所は、こういって微笑した。財政整理の命を受けて、大阪へ来た時、大阪町民は一人も相手にしなかった。一人で、六十万両を貸付けていた浜村孫兵衛が、催促しがてら、話対手になっただけであった。

調所は、自分の企画が成立しなかったら、切腹するつもりだった。孫兵衛を前にして、年々十二万斤の産高、金にして二十三四万両の黒砂糖を、一手販売にさせることから、米、生蝋、鬱金、朱粉、薬種、牛馬、雑紙等も、一手に委任するから、力を貸してくれと、頼み込んだ。

そして、孫兵衛が承諾するのを見て、密貿易の利を説いた。孫兵衛は、余り事が大きいから、重豪に一度、拝謁してからというので、江戸へ同道して、渋谷の別邸で引合すと、重豪は