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なんごくたいへいき
南国太平記
直木 三十五
Read 南国太平記 (なんごくたいへいき) by 直木 三十五 (なおきさんじゅうご) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 493,291 characters · 991 screens
と、自分とを、もう一度、二人の膝下へ集めたかった。苦労ばかりをして来た母に、皆の団欒を見せて喜ばしたかった。牧を討つのも、そのためになら――と、思った。
名越左源太の子は九歳であっても、小太郎は、益満は、道を譲らなくてはならなかった。伊集院平の倅が、少し馬鹿であっても、二千石を継ぐのに十分であった。益満は、それに不平をもっていたが、小太郎は諦めていた。だが、斉彬公の愛には望みをもっていた。斉彬公の代になったら――自分の才も、腕も、きっと、人に認められるであろう。知行は昇らなくてもいいから、自分の器量を――と、思うと、斉彬を呪っている牧が、憎くなってきた。
だが、父が、牧を討たずに死ぬ?――それも犬死ではないか。益満は、きっと遅れても来着するだろう。それを待って、牧を襲っても遅くはないのに――十人も警固の人数がいては、敵さないことは判り切っているのに――。
小太郎の闘志は、少しも起って来なかった。父は独りで興奮しているが、あの手紙も、何も皆※(「言+墟のつくり」、第4水準2-88-74)で、この深い山の中は、この堂と同じように、沈黙と、荘厳とだけしかないのだ。