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なんごくたいへいき

南国太平記

直木 三十五

Read 南国太平記 (なんごくたいへいき) by 直木 三十五 (なおきさんじゅうご) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 493,291 characters · 991 screens

Aozora Bunko

「頂上には、尊貴の方が修行してござるで――お戻り願いたい」

「尊貴の方とは?」

二人は、答えなかった。

「尊貴の方の、御名前を承りたい」

小太郎は、静かに足を引いて身構えにかかった。いつの間にか、顫えが無くなっていた。

「しつこい。断って通られるなら――」

八郎太が、大声で

「尊貴の方とは、牧仲太郎か」

「何っ」

二人が、一足退って、柄へ手をかけた。八郎太は畳みかけて

「牧の修法か」

二人は

「如何にも――それを知って通るとあらば、血を見るぞ」

と、叫んだ瞬間、杉木立に、谷間に、山肌に木魂して

「ええいっ」

小太郎の腰が、少し低くなって、左脚が、後方へ――きらっと、閃いた白刃は、対手を打つか、打たぬかに、小太郎の頭上で、八相に構えられていた。対手の肩口の着物が、胸の下まで、切り裂けて、赤黒い血が、どくんどくんと、浪打ちつつ噴き出していた。対手は眼を閉じて、暫くの間、前へ、後方へ揺れていたが、声も立てずに、脚も動かさずに、転がってしまった。それは、ほんの、瞬間だった。

「よし」

と、八郎太が、声をかけた。残った一人は、蒼白な顔をして、正眼につけたまま、動きもしなかった。