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なんごくたいへいき
南国太平記
直木 三十五
Read 南国太平記 (なんごくたいへいき) by 直木 三十五 (なおきさんじゅうご) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 493,291 characters · 991 screens
和、漢、蘭の書物にも、巾着切の早耳話ってのは、書いてないよ。これが本当に、わかんらん」
「びっくりしなさんな、五日で来るんだよ」
「はあ――五日でね」
「早い脚の奴は、日に三十五里、何んでもねえ。京を早立ちして、その夜の内に、鈴鹿を越えら。すると、亀山にゃあ、ちゃんと、仲間がいる。急用だっ、それっと、こいつが桑名まで一日。桑名へ来ると、仲間がまたいる」
「成る程」
「こうしなけりゃ、金目のものの処分がつかねえ。すられて、あっという間に、品物は、十里先で取引してらあ」
「ふふん、俺の講釈みたいに、少し与太が入ってるんじゃねえか」
「仙波の大旦那は斬死なすったよ」
「ええ?」
「上方の伸間へたのんでおいたら、さっき知らせて来たんだ。比叡山って山の上へ、牧って悪い奴を追っつめて、伏兵にかかったんだ」
「ふむ、伏兵にゃあ、東照宮だって敵わねえからのう」
「小太郎って、俺の手を折った若いのは、谷間へころがって、生死不明だ」
南玉は、返事をしなかった。
「まだあるんだ。大阪の蔵屋敷へ行った奥方と、そら、深雪さんの姉さん、何んとかいった――そら、何手、そら、何んとかの手」
「手は赤丹のつかみと来たが――」