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なんごくたいへいき
南国太平記
直木 三十五
Read 南国太平記 (なんごくたいへいき) by 直木 三十五 (なおきさんじゅうご) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 493,291 characters · 991 screens
それから、作法を見ると云って、四、五人の老女が坐って、茶を運ばせた。そして、茶碗の捧げようが、高いとか、低いとか、摺り足で歩いても、そんなに畳の音をさせてはいけないとか、眼のつけどころが――脣の結びようが――深雪は、自分さえ正しければ、自分の学んだ礼法は、武家作法だし――少しも、間違っていないと、思っていたが、老女達は、そういうことを問題にしていなかった。
彼女達は、古参ということを誇り、自分の下らぬ知識を見せびらかし、それから、自分達の独り身で老い朽ちて行く憤りを、美しく、若い女に向けて、それをいじめることを楽しみとしていた。
素直な、世間知らずの深雪に、そんな気持は判る筈が無かった。眼七分目に捧げたら、低すぎると叱られ、八分目にすると、高すぎると罵られ、その夜の湯殿で、肩を流しようが悪いと、湯を、肩からぶっかけられた時、明日にも、暇をとって戻ろうかとさえ思った。そして、冷たい、固い、臭のある蒲団をきて、じめじめした部屋で、泣きあかした。
鶏が鳴いて、夜が明け切らぬ頃から、耳を立て、拍子木の廻るのを聞いていた。そして、侍女を起す木が響くと共に起き出た。