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なんごくたいへいき

南国太平記

直木 三十五

Read 南国太平記 (なんごくたいへいき) by 直木 三十五 (なおきさんじゅうご) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 493,291 characters · 991 screens

Aozora Bunko

梅野は、上座へ坐って、静かに

「何しに、今時、庭へおじゃった?」

深雪が、顔を上げると、拝領物を飾る棚、重豪公の手らしい、横文字を書いた色紙、金紋の手箪笥、琴などが、綺麗に陳んでいた。そして、その前で、梅野は、紙張りの手焙へ、手をかざしていた。

「はい、不調法仕りました。以後心得まするから、お見のがし下さりませ」

深雪は、手をついた。

「さあ、訳を話せば、その訳によって、見逃さんでもない――訳は?」

深雪は、何ういっていいか、わからなかった。

「返事は?」

「はい」

「涼みに出る時節でもないし、厠を取りちがえるそなたでもないし、まさか、男と忍び合うような大外れた小娘でもあるまいし、のう――深雪」

深雪は、真赤になって、俯向いた。

(赤くなっては、悟られる)

と、思ったが、少しも、心に咎めない、小藤次との間のことであるのに、顔が赤くなってしまった。

「とんとんと、叩いていたのは?」

深雪は、身動きも出来なかった。

「合図かえ」

深雪は首を振った。

「合図でなければ、何んじゃ」

「はい」

「慣れぬことゆえ、初めのうちは、誰しもいろいろと失策はある。万事、それは、妾の胸一存に納めておくから――正直なところを申してみや。