Japanese reading practice

Read classic Japanese books with furigana

ja-reading.com

Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.

なんごくたいへいき

南国太平記

直木 三十五

Read 南国太平記 (なんごくたいへいき) by 直木 三十五 (なおきさんじゅうご) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 493,291 characters · 991 screens

Aozora Bunko

「よい景色だ」

と、岩へ近づいた。そして、海を見てから、岩へ眼を落すと、すぐ、微笑を消して、岩と、岩の周囲を眺め廻した。

「焚火を、しよりましたのう」

仁十郎が、こういったのに答えないで、岩の下に落ちている焚木の片を拾う。

「和田――乳木であろう」

と、差出した。和田は手にとって、すぐ

「桑でございますな」

乳木とは、折って乳液の出る、桑とか、柏とかを兵道家の方で称するのであった。

玄白斎は、岩へ、顔を押当てるようにして、岩から、何かの匂を嗅いでいたが

「和田、嗅いでみい」

仁十郎は、身体を岩の上へ曲げて、暫く、鼻を押しつけていたが

「蘇合香?」

と、玄白斎へ、振向いた。玄白斎は、ちがった方向の岩上を、指でこすって、指を鼻へ当てて

「竜脳の香もする」

和田は、すぐ、その方へ廻って鼻をつけて

「そう、竜脳」

と、答えた。

「これは、塩だ」

玄白斎は、白い粉を、岩の上へ、指先でこすりつけていた。仁十郎は、谷間へのぞんだ方の岩の下をのぞいていたが、急に、身体を曲げて、手を延した。そして、何かをつまみ上げて、玄白斎へ示しながら

「先生、蛇の皮が――」

と、大きい声をした。