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なんごくたいへいき

南国太平記

直木 三十五

Read 南国太平記 (なんごくたいへいき) by 直木 三十五 (なおきさんじゅうご) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 493,291 characters · 991 screens

Aozora Bunko

「母子二人で――」

「そして、何う致しましたえ」

「手前、その娘を、浜村孫兵衛の倅へ、縁づけるよう申し残しておきましたが、如何致しましたか」

「仙波は、牧様を討とうとして、殺された、八郎太とか申す者ではござりませぬか」

「ま、その話は後にして、少々、内密のことを――」

お由羅は、女達に

「次へ退りゃ」

と、命じた。女中達が、立って行った。深雪は、立ったのも、歩いたのも覚えなかった。見破られたのではないか、という不安よりも、南玉が、半分疑いながら知らして来てくれた父が殺されたということが、確実になったので、覚悟をしていながらも、深雪は、胸をくだかれた。

(この間見た夢のように――)

と、思うと、父の外、兄にも、母にも、姉にも、何んな不慮のことが起っているか、知れぬ気がしてきた。深雪は

(お由羅を刺せ)

と、父からいいつけられたが、何も知らずに、自分を、意地の悪い老女からかばってくれ、助けてくれ、古参よりも可愛がってくれるお由羅を、何うしても刺す気にはなれなかった。

(でも、父が、殺された上は)

そう思って、萎えてくる心を励ましてみても、父が、兄が、何故あんなに、敵党の人々を憎むのか?――お由羅でも、斉興でも、調所でも、いい人だのに――と、深雪は、男のように、心の底から、憤りを、これらの人々に感じることが出来なかった。