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なんごくたいへいき

南国太平記

直木 三十五

Read 南国太平記 (なんごくたいへいき) by 直木 三十五 (なおきさんじゅうご) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 493,291 characters · 991 screens

Aozora Bunko

(あの下賤な職人が、大勢いて――)

と、思うと、こうして、小藤次と歩いているのでさえ、身体が汚れてくるように感じた。

(だが、この人は、悪い人ではないし、本当に、妾を想っているらしい。でも、妾は、心から嫌いなのだから――堪らない、男臭い臭、下品な物のいい方、卑しい眼付――)

と、思った時

「喜平、駕がある。あつらえて参れ」

と、小藤次が、供に命じた。

「へい」

駕が、一梃、火の番小屋の横に置いてあった。柳の木と、火事見櫓とが、その上に、聳えていた。

「いいえ、歩きます」

「戯談じゃねえ。四国町まで、三日もかからあ、そんな、あんよじゃあ――」

と、声高に、云った時、火の番小屋の中から、駕屋が、手拭を提げて、御辞儀しながら出て来ていた。

(駕に乗っては、四国町の辺の人に、自分が、小藤次の家へ入るのを見つけさせる訳には行かない。それを見つけさせておかなかったら、誰も、庄吉へ、南玉へ、知らしてはくれないから)

深雪は

「要りませぬ。妾、歩いて参ります。妾一人で乗るのは勿体のうござりますから」

「何をいう。手前は、高が大工でござります。貴女はお姫様。えへっへっへってんだ。