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なんごくたいへいき

南国太平記

直木 三十五

Read 南国太平記 (なんごくたいへいき) by 直木 三十五 (なおきさんじゅうご) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 493,291 characters · 991 screens

Aozora Bunko

「ひっ――」

綱手の咽喉から、迸った叫びは、二人の耳から、胸を、ぐっと突いた。

「ああーっ」

綱手は、牡丹の花弁の落ちるように、崩れ倒れた。

「待てっ、仙波。待てっ、待てっ」

月丸は、刀を引いて、左手で、小太郎を押しとめた。そして、刀を投げすてて、絶望的に

「斬った」

月丸は、吐き出すように叫んで、小太郎にかまわず、綱手の、崩れ倒れている上へ、かがみ込んだ。小太郎は、それを見ながら、刀を提げたまま、黙って、肩で呼吸をしていた。

船の中に、灯が動いていたし、橋の上、街の角には、いくつも、提灯が、並んでいた。

「綱手」

月丸は、綱手の肩をさぐった。そして、腰の印籠へ手をやりつつ

「しっかりしてくれ――綱手っ」

薬を、口の中へ押入れようとすると、綱手は歯を噛みしめ、両手の拳を握って、身体中を、顫わしていた。

「口を――」

月丸は、小太郎へ哀みを乞うように見上げた。

「小柄で、押開けるがよい」

小太郎は、冷やかに、こう云って、川岸から、舟への歩み板を、半分程渡って行って

「船頭、灯をかしてくれぬか」

舟からは、答えがなかった。

「船頭っ」

「へっ」

「灯を貸せ」

灯が、動いて、船頭が、裸蝋燭を持って来た。