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なんごくたいへいき
南国太平記
直木 三十五
Read 南国太平記 (なんごくたいへいき) by 直木 三十五 (なおきさんじゅうご) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 493,291 characters · 991 screens
「仰せの通り――それから、秋水党の徒輩、もし、殿の御隠退が、のびのびと相成るようなら、何か、過激の手立にて、斉彬様を擁立し――彼奴らの、言葉を借りますると、君側の奸を除く、と申しますが――」
「ま、そんなことを、申しておりますか」
と、お由羅が、云った。石見は、お由羅へ笑いながら
「さしずめ、お部屋は、玉藻前と申すところでござるな」
「よし。もそっと、調べてみい。一指でも動かしたなら、その分には捨ておかぬから」
「それで、その、秋水党なる者の面々は――」
「それは、わしも、承知致しておる」
「如何して、御承知で、ござりまするか」
「調所の倅が、そいつらの連名を書いて、大阪で、知らせてくれた。山一、高崎、近藤などであろう」
「はい」
「不敵な奴等め。わしを、何んと心得ておるか」
斉興は、もう、米噛をふくらませていた。
「考えの足りない方達でござりますね」
と、お由羅が、静かに云った。
何んの物音も聞えない、奥まった部屋であった。燭台の灯は、少しも揺れないで、きらきらしていた。その一つの灯の下で、手紙を披げて、読んでいるのは、山田一郎右衛門で、その横で、その前で、腕を組んだり、時々蝋燭の心を切ったり、手紙を覗き込んだり、俯向いたり、眼を閉じて聞き入ったりしている人々は、赤山靱負、高崎五郎右衛門、井上出雲守、吉井七之丞、近藤隆左衛門