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なんごくたいへいき

南国太平記

直木 三十五

Read 南国太平記 (なんごくたいへいき) by 直木 三十五 (なおきさんじゅうご) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 493,291 characters · 991 screens

Aozora Bunko

殿の御推挙なさる人物なら――やがては、日本を背負って立つ底の――」

「それは判らんが、何時か、どこかで、逢う日があろう。わしは、勝という偉者が、徳川にいるということを、この連中に、伝えておこう。敵として逢っても頼もしいし、手を握るならこの上もない」

「忝なく存じます。それでは、手前、これにてお暇仕ります」

「久し振りで、気の合うた話をして、晴々とした。もう、帰国までに、会えまいが、くれぐれも、日本のために働いてくれ。頼む」

「はい」

勝は、これまで逢った何の大名よりも、親しく、友人のように、師のように、話をしてくれた斉彬の別れの言葉に、感激して、涙が出て来るように感じた。

「これ」

斉彬は、次の間の近侍を呼んだ。

「お帰りになるぞ」

「日本のために――」

勝は、手をついて、溢れ上ってくる感激を、眼の中に燃えさせて

「御自愛下されますよう」

「うむ――疲れたぞ、勝。いろいろのものと、闘って来たわい――よく、闘ったわい」

斉彬が、こういうと同時に、勝は、はらはらと、涙を落した。

「わしは子を亡くするので、家来を、皆わが子だと思うているが、その子同士が、よいとか、よくないとか、争ってのう――」