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なんごくたいへいき

南国太平記

直木 三十五

Read 南国太平記 (なんごくたいへいき) by 直木 三十五 (なおきさんじゅうご) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 493,291 characters · 991 screens

Aozora Bunko

(不吉な)

と、感じた。そして

「何れ、近々、出府するものなら、早く為されましては?」

斉興は俯向いていたが

「そうか」

と、云って、眼を閉じた。

「そんなに、若い奴等が、団結しておるのかのう」

三人とも、若い人々の意気、武芸、学問を知っていた。

「そうか」

と、斉興が、又呟いた。

「四面楚歌か」

「いいえ、左様ではござりませぬが」

と、将曹が云いかけると、斉興は、肩で溜息をして

「仕方があるまいな」

「仕方があるまい、とは?」

「家を譲ることじゃ。斉彬は大事でないが、家は大事じゃ。若者は殺せぬ――斉彬は、そんなに、若者に人望があるのかのう」

斉興は、しみじみと云った。お由羅は、俯向いて、煙草をつめた煙管を、膝へ置いたままにしていた。

「西郷」

と、声をかけて、庭の雑草の中を、有村俊斎(後の海江田信義)が、入って来た。吉之助は、何か書物をしていたが、俊斎を、ちらっと、上眼で見て、又、書きつづけていた。有村は、縁側から上って、机の側へ坐った。そして

「何を、書いている?」

吉之助は、筆を置いて

「福岡から――出雲守からの便りを聞いたか?」

「聞かん」

「福岡(斉彬の弟、黒田美濃守長博)、宇和島(伊達遠江守宗城)、南部(南部利剛)の三公と、阿部伊勢とが、内々談合してのう、近日、斉彬公御世継と決まるらしい」