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なんごくたいへいき
南国太平記
直木 三十五
Read 南国太平記 (なんごくたいへいき) by 直木 三十五 (なおきさんじゅうご) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 493,291 characters · 991 screens
吉田松陰が捕えられたし、佐久間象山が捕えられたし、斉彬公の御代になるのを待って、錦旗を乞うて、一戦仕出かすには、何うしても、京都へ一度行かんといけぬ」
益満が、こう云った時、長屋の外で
「この店に、益満って人は、居るかい」
飛脚屋の声らしかった。一人が
「ここだ」
と、云って、起き上ろうとした時、富士春の声で
「ええ」
と、聞えると、下駄の音がして、格子が開いた。
「お前さん、赤紙付の手紙だよ。一寸、印をついておくれな」
富士春は、湯戻りらしく、襟白粉を濃くして、七つ道具を片手に抱えて、右手に、手紙を持って来た。
「おいきた」
一人が、受取ると、益満が、矢立を開いて、朱肉を印へついて、手紙を、裏返すと
「うむ」
と、云った。そして
「おい」
と、赤紙を、富士春に渡して、封を切って読んで行くと、微笑して
「あはははは、西郷め、大きな図体を、持て余して、居やがるぞ」
そう云って、披げたままの手紙を、二人の前へ投げ出した。二人は、少し読んで行くと、笑顔になって
「面白いが、ちと、手荒いの」
「御用盗とは、よく名づけた」
富士春は、鏡台の前で、鬢を掻き出しながら
「何んの手紙?」